相続の手続きが簡単になる?
法務省は5日、相続手続きを簡素化する「法定相続情報証明制度」(仮称)を来年度に新設すると発表しました。まだ発表2日前に発表されたばかりの制度ですが、いきなり出てきた印象のある制度です。
「法定相続情報証明制度」(仮称)はいったいどんな制度でしょうか?
相続の手続きで金融機関に行ってみたことありますか?こんなことを言われます。
ある日、Aさんが亡くなられたとします(Aさん=被相続人)。
Aさんには奥さんのBさん、子どものCさん、Dさんがいるとします。
Aさんの通帳を解約しに金融機関にBさんが行ったとします。
「相続人である証明を出して下さい。どなたが相続人であるかの証明をお願いします」と言われます。
この場合、Aさんの相続人はBさん、Cさん、Dさんの3人になります。では、それを何で証明したら良いでしょうか?
Bさん、Cさん、Dさんが相続人である証明は戸籍の夫婦関係や親子関係をみることで出来るかも知れません。
でもこの3人が相続人全員である証明はどうしたらいいでしょうか?ひょっとしてAさんにどこかにもし別に子どもがいたとするとその人も相続人になります。Aさんが他に子どもがいないという証明はどうしたら良いでしょうか?
相続人の証明の仕方
被相続人の相続人を確定するためには、Aさんの生まれてから死ぬまでの戸籍謄本を全て取り寄せます。そしてそれを揃えることで、相続人が誰であるかを確定する必要があります。
先ほどの金融機関さんの言われた
「相続人である証明を出して下さい。どなたが相続人であるかの証明」は
・Aさんの生まれてから死ぬまでの全ての戸籍
・相続人の方達が今生きているという証明としてのBさん、Cさん、Dさんの戸籍謄本になります。
戸籍の取り寄せは、もちろん自分で行うことも出来ますが、遠方や、転籍を繰り返しているなど、相続登記を依頼する司法書士に一緒に御頼まれる方も多いです。
相続手続きを簡素化する「法定相続情報証明制度」
そんな相続を証明する手続きの仕方が少し変わりそうです。
法務省が発表した「法定相続情報証明制度」。
この制度は先ほどお話しした、相続を証明するための、戸籍に関する戸籍謄本等の書類一式を一度法務局に提出することで、法務局に証明書を交付してもらい、その後は沢山の戸籍を持って歩くのでなく、法務局の交付した証明書が戸籍の代わりになるというものです。
これが可能になると、最初に法務局で「法定相続情報証明」の交付を受けることで、その後の金融機関や保険会社では証明書の写しの提出だけで手続きが行えるようになるとのこと。
法務省としてはこの「法定相続情報証明制度」はパブリックコメントを実施した上で必要な規則等の改正を行い、来年5月の運用開始を目指しているようです。
どんな証明書か、どんな制度か、まだ内容は見えてこない
現在の相続登記の中でこんな運用があります。
法務局へ提出する戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)は原本である必要があるのですが、相続関係説明図を一緒に提出した場合には、登記完了後にすべて返却してもらうことができるというものです。
「法定相続情報証明書」がどんな書面になるのか、多くの方が様々な推測をされています。私は現在の登記の戸籍謄本の原本還付の運用のように、相続関係説明図的なものに法務局の証明印がおされる形になるのではないかと考えています。
余談ですが、この制度だと、沢山の戸籍を確認して、間違いないかを確認するのは法務局の仕事になります。
法務局の忙しさを端からみているものとしては、現行の登記の仕事にさらにこの「法定相続情報証明」が殺到した場合どうなるのだろうとふと心配に思いました。
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