「あなた」という特別な経験目録/『フラーがぼくたちに話したこと』

私には価値があるだろうか?

自分には価値がないのかもしれない、
そんな風に考えたことはありませんか?

つい人と比べてみたり、自分の持っている技術や考えがつまらないものに思えてきたり。

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そもそも「自分の価値」ってなんでしょう?

 

バックミンスターフラーという人

私がバックミンスターフラー(通称:バッキー)に出会ったのは高校時代の図書館。

装丁のセンスの良さに思わず手に取った『宇宙船「地球号」操縦マニュアル』。読み始めてあっという間に引き込まれました。

「宇宙船地球号」という言葉がありますが、この概念の発明者であるのはまさにこのバックミンスターフラー、バッキーです。

『宇宙船「地球号」操縦マニュアル』

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※今こちらの書籍は絶版で、文庫版「宇宙船「地球号」操縦マニュアル」になっています。

『フラーがぼくたちに話したこと』

そのバッキーが書いた『フラーがぼくたちに話したこと』という本があります。

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この本は、当時80歳になっていた哲学者であり技術者であり発明家であるバッキーと3人の子どもたちの対話の本です。

「読者へのおぼえがき」
「あなたと子供たちを対面させて、結果を記録できればすばらしいですね」私は思いきって聞いてみた。「テーマは『今の子供たちが次の時代を生きるとき、ほんとうに助けとなる情報とはどんなものか?』ということにしたらどうでしょう」。「進めてごらん」バッキーはこう応えた。「なんでも言ってくれ」こうして、この本ができたのだ。

バッキーと子どもたちの対話は時に数学的であったり、時に社会的な問題を語りながらもどこまでも対等で素敵な仲間である関係を失いません。

この素敵な本の内容はまた改めてご紹介するとして、今日はこの本の中での、彼の言葉『特別の経験目録』について書きたいと思います。

 

あなたという『特別の経験目録』

フラーは人生の前半、様々な不幸に見舞われます。そして、人生に絶望したフラーは32歳の時に自殺しようとします。

時は1927年。入水自殺しようとしたフラーはミシガン湖畔に佇んでいて最後の思考に入ったそうです。その時のことがこの本の中に書かれています。

すべてがひとつの考えからはじまった。「これがおまえの心を使う最後の時。だから、うまく使うんだ。自分自身で考えろーおまえがほんとうに考えたことだけに目を向けるんだ」
それはこの上なく貴重な瞬間だった。時間が消えて、突然本質が顔を出す。澄みきった思考の流れが注ぎこみ、他のすべての考えを一掃する。かつてなかった明晰さ。魂が釘付けにされる瞬間だ。突然バッキーは、彼の苦痛のほとんどが、自分自身ではそう感じたり直観したりしていないのに、ただ他人が信じろと言うことを信じようとしたことから生まれてきたものであることを理解した。

そこで起こった意識のブレイクスルー。

「人生を違ったふうに見てみたらどうだろう?これ以後、”自分”のためには生きず、私の人生と経験を他人のためだけに使ってみたらどうだろう。私は考えた。われわれは誰なんだ?生きるとはどういうことなんだ?
そして私は気づいた。私たちは一人一人はかけがえのない経験の目録なんだ。そして私は、他の人たちが私と同じようにやって傷つくことがないように、自分の経験を使うことができる。わたしが感じたような苦しみを他人がかんじないですむように、彼らを助けることができるんだ」

 

バッキーは、自分が失ったものはなにもなかったことに気がついた。自分の人生経験で、他人のために使えないものはなにもない。機械工としての日々は、目には見えないが、人間の必要を満たすために使える、驚くべき力の領域が存在することを教えてくれた。海軍での日々は、分けては考えられぬ全体として、つまり全人類が乗客として運命を共にする「宇宙船地球号」として、世界を見ることを教えてくれた。ビジネス上の失敗も、商業的、政治的支配の限界を、彼に教えてくれるものだった。

この気づきの後、水際からとって返したフラーは思想家、幾何学者、発明家、詩人、建築家として活躍していくことになります。

「私がなぜここにいるのかはわからない。けれども、人類からこの私という特別の経験目録を勝手にとりのぞいてもかまわない、などと言うことはできない。そうなのだと、私は自分に言いきかせた。私たちは他人を助けるために生まれてきたこと、そして各人は全人類と関係していることもわかった。大いなるデザインの一部として自分自身を見てみれば、私の経験を全人類のために役立たせることができる。しかし、身を投げてしまえば、そんなことはできなくなると思った」

誰しも「特別の経験目録」であるということ。

この言葉はいつも私の心のどこかにあります。目の前で出会うすべての人が「特別な経験目録」の持ち主であるということ。

そんな見方で見たとき、「私には価値があるだろうか」という問いにはおのずと答えが出ているように思います。

 

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あなたという特別な経験目録。

その目録を誰かに話してみること、伝えてみること。

そのあなたの目録こそが誰かにとって大切な扉を開ける鍵になるのだと私は思っています。

 

 


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